#45 ハナショウブ(花菖蒲)
科・属名:アヤメ科アヤメ属
和 名:花菖蒲
別 名:玉蝉花(ギョクゼンカ)
菖蒲(ショウブ)、アイリス
学 名:Iris ensata
英 名:Japanese water iris
原産地 :日本を含む東アジア(中国、朝鮮半島)
咲 期:6月初旬~中旬
花言葉 :うれしい知らせ、伝言、優雅、あなたを信じます
心意気、優しい心、信頼
【1】ハナショウブの名前の由来
ハナショウブの葉は、端午の節句(こどもの日)に
男の子を菖蒲湯に入れて、たくましく育つように願う風習でおなじみの
菖蒲(ショウブ)という植物の葉に似ていて
綺麗な花を咲かせることからハナショウブと呼ばれるようになりました。
菖蒲湯…強い香りで邪気を払うともいわれています。
ちなみに菖蒲(ショウブ)はサトイモ科の植物で
ハナショウブはアヤメ科なのでまったくの別種です。
『菖蒲』という漢字を書いて『ショウブやアヤメ』と読みますが
もともとアヤメは『文目や綾目』という字を書きます。
なので本来"菖蒲"と書いて"アヤメ"とは読まないのですが
ハナショウブとアヤメの花姿が似ていることから
間違えて使われるようになり現在に至るようです…
花菖蒲(ハナショウブ)と菖蒲(ショウブ)と菖蒲(アヤメ)は別物
また、一般的に別名とされている『玉蝉花(ギョクゼンカ)』は
別名というよりは中国語読みのハナショウブのことです。
【2】ハナショウブの花姿、特徴
梅雨の時期に美しく可憐な花を咲かせるハナショウブは
アヤメやカキツバタと同じアヤメ科アヤメ属の近縁種で
花色は青、青紫、紫、白、ピンク、黄色などがあります。
アヤメ科の植物のなかでハナショウブは比較的に歴史が新しく
江戸時代中期以降に野生のノハナショウブの変わり種を交配させ
たくさんの園芸品種がつくられました。
現在その数は約5000種以上とも言われていて
バラエティに富んでおり日本では古くから生け花に取り入れられたりと
たくさんの人から愛されているお花です。
◉ハナショウブの特徴
3枚の内花被片(花弁)と垂れ下がった外花被片(ガク)からなり
外花被片の中央に黄色い目のような形の斑紋があります。
ハナショウブの草丈は80~100㎝と背が高く
花の大きさも大輪で、各地の菖蒲園などで一斉に咲くと
とても見ごたえがあります。
また、園芸品種が多く青紫系以外にも
黄色や白、ピンクなどがあり、とても多彩で魅力溢れるお花です。
畑のような乾燥地でも、水辺のような湿地帯でも
生育に適しています。
【3】たくさんの花言葉とその由来
上記の通りハナショウブの花言葉はとても多くあります。
「うれしい知らせ」 「伝言」
これらの花言葉はアイリス(iris)と呼ばれるお花に
共通してつけられた花言葉で
ギリシャ神話に登場する女神イリスに由来しており
虹を渡って便りが届けられることにちなんでいます。
こんな神話も…
全知全能の神ゼウスは、とても浮気性で妻のヘラがありながら
ヘラの付き人である美しい娘イリスに求愛しました。
これに困ったイリスは、ヘラに申し出ました。
『どこか遠くへ行きたい…』
ヘラはイリスの願いを受け入れ、イリスに七色の首飾りを授けました。
そして神々の酒を頭からかけました。
するとイリスは、虹の女神へと姿を変え
酒の雫は雨のように地上へ落ち、落ちた雫が
きれいなアイリスの花になりました。
というお話があります。
「優雅」 「優しい心」
潔いほどにまっすぐ長く伸びた茎の上から
垂れ下がる凛とした可憐な花姿から
こちらの花言葉がつけられました。
「心意気」
5/5の端午の節句が由来と言われています。
もともと端午の行事は宮中祭祀で江戸時代頃から
庶民にも親しまれる行事になりました。
サトイモ科の菖蒲(ショウブ)は、花は咲かせますが鑑賞できるほど
きれいなものではないので、その代わりとして
葉が似ていて綺麗な花を咲かせるハナショウブを飾り
武士の時代の名残から男の子の成長を願う年中行事となり
この花言葉がつきました。
【4】何れ文目か杜若
カテゴリータイトルにもありますように
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
「いずれアヤメかカキツバタ」
アヤメの花もカキツバタの花も、甲乙つけがたいほど美しく
似ていて区別がつきにくいことから
どちらも優れていて優劣がつきにくいことを言います。
先ずは写真をご覧ください📸
いずれアヤメかカキツバタかハナショウブか…
皆様わかりますでしょうか?
ハナショウブの特徴は上記の通りですので
アヤメとカキツバタの特徴をササっと紹介します。
◉アヤメ(文目・綾目)
・アヤメ科アヤメ属
・咲期
5月中旬~下旬
・栽培場所
畑のように乾燥した地が栽培に適している。
・草丈
30~60㎝で花は小輪。
・名前の由来
細い剣状の葉が縦に並ぶ姿が、文目模様に見えることから。
また、外花被片の根元の網目(アミメ)模様が訛って
アヤメとなったと言われています。
◉カキツバタ(杜若・燕子花)
・アヤメ科アヤメ属
・咲期
5月中旬頃
・栽培場所
水辺など湿地帯
・草丈
50~70㎝で花は中輪。
・名前の由来
カキツバタの花汁を摺って衣類を染める
染料に使用していたことから
「掻付花(カキツケハナ)」や「書付花(カキツケバタ)」と
呼ばれていたという説があります。
要約しますと
・畑に咲いているのはアヤメかハナショウブ
・水辺に咲いているのはカキツバタかハナショウブ
・畑に咲いていて小さいとアヤメ、大きいとハナショウブ
・水辺に咲いていて、そんなに大きくないならカキツバタ
大きいとハナショウブ
お花の特徴を読んでもわからない!という方のために
簡単な見分け方を紹介しましょう。
ハナショウブ:品種が多く多彩な色や形がありますが
外花被片の根元に黄色い目のような形の模様
アヤメ:品種はさほど多くなく、外花被片の根元に網目模様
カキツバタ:こちらも品種はさほど多くはなく
外花被片の根元に白くて細い模様
長々となってしまいましたが、花びらの模様で
見分けがつくと思います。
【5】ハナショウブの飾り方
スラっとまっすぐに伸びる茎に
可憐な花を咲かせるハナショウブ。
やはり菖蒲園などでありのままの姿を鑑賞するのも
良いのではないかとも思うのですが
お家の玄関やリビングなどに飾ると
とても華やぎますので、飾り方の一例を紹介します。
色々なお花と合わせて花瓶に飾ると
独特の青紫の色合いが赤系の色合いを
引き立ててくれますし、良い抜け感にもなります。
派手な色味に負けないほどお花が大きいので
とても存在感があります。
または、こちらのように
ハナショウブだけで生けた方がハナショウブの存在がより際立って
ハナショウブの持つ魅力を最大限に引き出せるかと思います。
縦長の透明な花瓶にたっぷりとお水を入れて
生けてあげるとお洒落で、ブライダル装花にも向いていますし
これから梅雨の時期のじめじめとした嫌な室内を涼しげにしてくれます。
そして何より、古くから日本の華道で親しまれたお花だけあって
和室の花瓶に1~2本飾るだけでシンプルで
すっきりとしていて綺麗ですね。
和室の畳や障子ともとても良く合い
少量のお花でも温かみのある雰囲気になります。
【6】終わりに
今回はハナショウブについてご紹介させていただきました。
端午の節句の菖蒲湯の菖蒲という別の植物があったり、
菖蒲という字を書いて"アヤメ"と読む誤用が広まったり、
ハナショウブとアヤメとカキツバタと
同じアヤメ科アヤメ属で見た目が似ていて
パッと見ただけでは区別がつきにくかったり、
ハナショウブやカキツバタを総称してアヤメと呼んだり…と
とてもややこしい内容でした。
アヤメやカキツバタの開花時期が短いのは
品種が少ないからで、ハナショウブは、その品種の多さから
お花が長い期間楽しめます。
万葉集にはカキツバタが詠まれていますが
文献にハナショウブが登場するのは江戸時代からで
江戸時代中期から盛んに改良され、愛されてきたハナショウブは
日本が世界に誇れるお花だと思います。
そんな魅力溢るハナショウブ。
この記事を読んでくださった方の中に1人でも
ハナショウブに関心を持っていただけたなら幸いです。
科・属名:アヤメ科アヤメ属
和 名:花菖蒲
別 名:玉蝉花(ギョクゼンカ)
菖蒲(ショウブ)、アイリス
学 名:Iris ensata
英 名:Japanese water iris
原産地 :日本を含む東アジア(中国、朝鮮半島)
咲 期:6月初旬~中旬
花言葉 :うれしい知らせ、伝言、優雅、あなたを信じます
心意気、優しい心、信頼
【1】ハナショウブの名前の由来
ハナショウブの葉は、端午の節句(こどもの日)に
男の子を菖蒲湯に入れて、たくましく育つように願う風習でおなじみの
菖蒲(ショウブ)という植物の葉に似ていて
綺麗な花を咲かせることからハナショウブと呼ばれるようになりました。
菖蒲湯…強い香りで邪気を払うともいわれています。
ちなみに菖蒲(ショウブ)はサトイモ科の植物で
ハナショウブはアヤメ科なのでまったくの別種です。
『菖蒲』という漢字を書いて『ショウブやアヤメ』と読みますが
もともとアヤメは『文目や綾目』という字を書きます。
なので本来"菖蒲"と書いて"アヤメ"とは読まないのですが
ハナショウブとアヤメの花姿が似ていることから
間違えて使われるようになり現在に至るようです…
花菖蒲(ハナショウブ)と菖蒲(ショウブ)と菖蒲(アヤメ)は別物
また、一般的に別名とされている『玉蝉花(ギョクゼンカ)』は
別名というよりは中国語読みのハナショウブのことです。
【2】ハナショウブの花姿、特徴
梅雨の時期に美しく可憐な花を咲かせるハナショウブは
アヤメやカキツバタと同じアヤメ科アヤメ属の近縁種で
花色は青、青紫、紫、白、ピンク、黄色などがあります。
アヤメ科の植物のなかでハナショウブは比較的に歴史が新しく
江戸時代中期以降に野生のノハナショウブの変わり種を交配させ
たくさんの園芸品種がつくられました。
現在その数は約5000種以上とも言われていて
バラエティに富んでおり日本では古くから生け花に取り入れられたりと
たくさんの人から愛されているお花です。
◉ハナショウブの特徴
3枚の内花被片(花弁)と垂れ下がった外花被片(ガク)からなり
外花被片の中央に黄色い目のような形の斑紋があります。
ハナショウブの草丈は80~100㎝と背が高く
花の大きさも大輪で、各地の菖蒲園などで一斉に咲くと
とても見ごたえがあります。
また、園芸品種が多く青紫系以外にも
黄色や白、ピンクなどがあり、とても多彩で魅力溢れるお花です。
畑のような乾燥地でも、水辺のような湿地帯でも
生育に適しています。
【3】たくさんの花言葉とその由来
上記の通りハナショウブの花言葉はとても多くあります。
「うれしい知らせ」 「伝言」
これらの花言葉はアイリス(iris)と呼ばれるお花に
共通してつけられた花言葉で
ギリシャ神話に登場する女神イリスに由来しており
虹を渡って便りが届けられることにちなんでいます。
こんな神話も…
全知全能の神ゼウスは、とても浮気性で妻のヘラがありながら
ヘラの付き人である美しい娘イリスに求愛しました。
これに困ったイリスは、ヘラに申し出ました。
『どこか遠くへ行きたい…』
ヘラはイリスの願いを受け入れ、イリスに七色の首飾りを授けました。
そして神々の酒を頭からかけました。
するとイリスは、虹の女神へと姿を変え
酒の雫は雨のように地上へ落ち、落ちた雫が
きれいなアイリスの花になりました。
というお話があります。
「優雅」 「優しい心」
潔いほどにまっすぐ長く伸びた茎の上から
垂れ下がる凛とした可憐な花姿から
こちらの花言葉がつけられました。
「心意気」
5/5の端午の節句が由来と言われています。
もともと端午の行事は宮中祭祀で江戸時代頃から
庶民にも親しまれる行事になりました。
サトイモ科の菖蒲(ショウブ)は、花は咲かせますが鑑賞できるほど
きれいなものではないので、その代わりとして
葉が似ていて綺麗な花を咲かせるハナショウブを飾り
武士の時代の名残から男の子の成長を願う年中行事となり
この花言葉がつきました。
【4】何れ文目か杜若
カテゴリータイトルにもありますように
こんな言葉を聞いたことはありませんか?
「いずれアヤメかカキツバタ」
アヤメの花もカキツバタの花も、甲乙つけがたいほど美しく
似ていて区別がつきにくいことから
どちらも優れていて優劣がつきにくいことを言います。
先ずは写真をご覧ください📸
いずれアヤメかカキツバタかハナショウブか…
皆様わかりますでしょうか?
ハナショウブの特徴は上記の通りですので
アヤメとカキツバタの特徴をササっと紹介します。
◉アヤメ(文目・綾目)
・アヤメ科アヤメ属
・咲期
5月中旬~下旬
・栽培場所
畑のように乾燥した地が栽培に適している。
・草丈
30~60㎝で花は小輪。
・名前の由来
細い剣状の葉が縦に並ぶ姿が、文目模様に見えることから。
また、外花被片の根元の網目(アミメ)模様が訛って
アヤメとなったと言われています。
◉カキツバタ(杜若・燕子花)
・アヤメ科アヤメ属
・咲期
5月中旬頃
・栽培場所
水辺など湿地帯
・草丈
50~70㎝で花は中輪。
・名前の由来
カキツバタの花汁を摺って衣類を染める
染料に使用していたことから
「掻付花(カキツケハナ)」や「書付花(カキツケバタ)」と
呼ばれていたという説があります。
要約しますと
・畑に咲いているのはアヤメかハナショウブ
・水辺に咲いているのはカキツバタかハナショウブ
・畑に咲いていて小さいとアヤメ、大きいとハナショウブ
・水辺に咲いていて、そんなに大きくないならカキツバタ
大きいとハナショウブ
お花の特徴を読んでもわからない!という方のために
簡単な見分け方を紹介しましょう。
ハナショウブ:品種が多く多彩な色や形がありますが
外花被片の根元に黄色い目のような形の模様
アヤメ:品種はさほど多くなく、外花被片の根元に網目模様
カキツバタ:こちらも品種はさほど多くはなく
外花被片の根元に白くて細い模様
長々となってしまいましたが、花びらの模様で
見分けがつくと思います。
【5】ハナショウブの飾り方
スラっとまっすぐに伸びる茎に
可憐な花を咲かせるハナショウブ。
やはり菖蒲園などでありのままの姿を鑑賞するのも
良いのではないかとも思うのですが
お家の玄関やリビングなどに飾ると
とても華やぎますので、飾り方の一例を紹介します。
色々なお花と合わせて花瓶に飾ると
独特の青紫の色合いが赤系の色合いを
引き立ててくれますし、良い抜け感にもなります。
派手な色味に負けないほどお花が大きいので
とても存在感があります。
または、こちらのように
ハナショウブだけで生けた方がハナショウブの存在がより際立って
ハナショウブの持つ魅力を最大限に引き出せるかと思います。
縦長の透明な花瓶にたっぷりとお水を入れて
生けてあげるとお洒落で、ブライダル装花にも向いていますし
これから梅雨の時期のじめじめとした嫌な室内を涼しげにしてくれます。
そして何より、古くから日本の華道で親しまれたお花だけあって
和室の花瓶に1~2本飾るだけでシンプルで
すっきりとしていて綺麗ですね。
和室の畳や障子ともとても良く合い
少量のお花でも温かみのある雰囲気になります。
【6】終わりに
今回はハナショウブについてご紹介させていただきました。
端午の節句の菖蒲湯の菖蒲という別の植物があったり、
菖蒲という字を書いて"アヤメ"と読む誤用が広まったり、
ハナショウブとアヤメとカキツバタと
同じアヤメ科アヤメ属で見た目が似ていて
パッと見ただけでは区別がつきにくかったり、
ハナショウブやカキツバタを総称してアヤメと呼んだり…と
とてもややこしい内容でした。
アヤメやカキツバタの開花時期が短いのは
品種が少ないからで、ハナショウブは、その品種の多さから
お花が長い期間楽しめます。
万葉集にはカキツバタが詠まれていますが
文献にハナショウブが登場するのは江戸時代からで
江戸時代中期から盛んに改良され、愛されてきたハナショウブは
日本が世界に誇れるお花だと思います。
そんな魅力溢るハナショウブ。
この記事を読んでくださった方の中に1人でも
ハナショウブに関心を持っていただけたなら幸いです。
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