♯51 彼岸花(ヒガンバナ)


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科・属名:ヒガンバナ科・ヒガンバナ属
和  名:彼岸花
別  名:曼殊沙華(マンジュシャゲ)、リコリス 他
学  名:Lycoris radiata
英  名:Red spider lily
原産地 :日本、中国
咲  期:7月~10月
花言葉 :情熱、独立、再会、あきらめ、悲しい思い出
      思うはあなた一人、また会う日を楽しみに(赤色)
      また会う日を楽しみに、思うはあなた一人(白)
      追想、深い思いやりの心、悲しい思い出(黄色)  









【1】彼岸花の名前の由来


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秋の彼岸頃に土手や田んぼの畔に咲き乱れる彼岸花。

夏の終わりとともに、少し肌寒くなって物悲しくなる季節に赤く咲き誇り
その独特な花姿や特徴をもつヒガンバナに
みなさんはどのようなイメージを持っていますか?

『怖い』や『不吉な花』といったイメージを持つ方が多いと思います。



では、なぜヒガンバナに『怖い花』というイメージがついてしまったのか
探っていきたいと思います。



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名前の由来として
ヒガンバナはその名の通り、秋の彼岸の頃に咲くという意味と
花全体に強い毒性があることから
"食べると彼岸の向こう側(=あの世)へ逝ってしまう"という意味が
あるとされています。



最も有名な別名として"曼殊沙華"があります。
この曼殊沙華とはサンスクリット語で
"天上の花(=天界に咲く花)"を意味する仏教用語です。
仏教においてのヒガンバナは純白で現世でのヒガンバナとは
一線を画す見た目であると言われていますが
おめでたいことが起こる兆しにこの天上の花である純白のヒガンバナが
赤く色づき天から降ってくるという仏教の経典から来ているとされています。
また、梵語では『赤く美しい花』との意味もあります。






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◉別名(異名)が多すぎる彼岸花



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ヒガンバナの別名・異名は方言も数えると1000を超えるとも言われています。
華奢な茎に燃えるような赤い花弁、禍々しささえ感じる見た目に
昔の人々は様々な想いを抱いたのでしょう。

全部は紹介できませんので一部ご紹介します。




・死人花(しびとばな)、地獄花(じごくばな)

こちらはヒガンバナの咲くところには死体が埋まっているという逸話から
生まれたと言われています。




・親死ね子死ね

物凄くインパクトがあり恐ろしい異名です。
これはヒガンバナの花が咲き、枯れ朽ちた後に葉が出てくるという特性に由来します。
本来植物は葉が茂ることで光合成をおこない
花をつけますが面白いことにヒガンバナは逆なのです。

なのでまたの別名を「葉見ず花見ず」、「花知らず葉知らず」等とも言います。
花と葉が殺し合った末にこの様になったともいわれ
似たようなものとして「親殺し」、「親知らず」も存在します。


韓国では"花のある時に葉はなく、葉がある時は花がない"ことから
『相思華(サンチョ)』と呼ばれます。
花は葉を想い、葉は花を想う…と、日本とは逆のイメージなのです。


また、ヒガンバナは発芽後1週間ほどで開花するので
何もなかったところに突然、赤く禍々しい花が咲くので
"幽霊花"とも呼ばれます。




・狐の提灯、提灯煌々

狐の嫁入りの際にヒガンバナに火をつけ灯りにしたことに由来していて
ヒガンバナの燃えるような赤い色は火に例えられます。
他にも"狐の花火" "狐のかんざし" "狐のたいまつ" "狐の蝋燭"など
上記のように物騒なヒガンバナの異名が多くありますが
きつねシリーズは和やかなものが多いです。


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他にも「姑花」、「嫁の簪(かんざし)」、「吐掛婆(はっかけばばぁ)」
「婆殺し」、「歯抜け婆」など嫁いびりから来たものや

「雷様花」、「夕立花」など乾燥していたところに秋雨による大雨で
ヒガンバナが一斉に開花するという現象に関するもの

「水子衆花(みずくしばな)」、「捨て子花」などの子どもに関するものなど
本当にたくさんの異名があります。

今回はほんの一部になりますので気になる方は
別名やその由来を調べてみるのも面白いかもしれません。





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【2】彼岸花の花姿




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ヒガンバナ科に属する多年草。
学名はLycoris radiata(リコリス ラディアータ)で
Lycorisはギリシャ神話のリコリスという海の女神から来ており
花がとても美しいことからに因んでいます。

radiataは"放射状の舌状花を持つ"という意味です。
舌状花とは、わかりやすくヒマワリで例えると
黄色の花弁の部分にあたります。




ヒガンバナの花は他の花に比べて独特で
長さ4㎝、幅5㎜ほどの花弁を6~7枚つけ
それが放射状に開きます。
草丈は大人の膝下くらいの40㎝ほどで
雄しべが長く伸びるのも特徴です。



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花色は、赤色・白・黄色が一般的ですが
赤色に比べたら白や黄色は繁殖力が弱く個体数が少ないです。
白のヒガンバナは稀にクリーム色や薄いピンクのものが自生していますが
これも品種的に弱いことが理由として挙げられます。




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白のヒガンバナが九州に多いのは
生育条件が九州の気候に合うものと考えられます。










【3】哀愁漂う彼岸花の花言葉


上記の通りですがヒガンバナには色別に花言葉があります。
しかし共通する部分もあるのでまとめて紹介します。



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『あきらめ』 『悲しい思い出』 『再会』 『追想』
『思うはあなた一人』 『また会う日を楽しみに』
『深い思いやりの心』


これらの花言葉は、やはり日本の独自の文化であるお彼岸に
関係しているとされています。
また墓場にヒガンバナが咲いていることが多いことも関係しています。


お彼岸とは年に二回、春と秋の春分の日、秋分の日の
前後3日間のことをいい、彼岸(あの世)と此岸(この世)が
最も近付く日であるとされています。


故人を想い偲び別れを受け入れる。

また再会できる日を楽しみに亡くなった方との思い出にふける…
あなたの事を想って生きていく…
そんな日本人の奥ゆかしさや強さ、
命の尊さが表された花言葉だと思います。




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『情熱』

ヒガンバナの燃えるような赤い色から
この花言葉になりました。




『独立』

この花言葉はヒガンバナが真っ直ぐに咲く姿や
緑の中にポツンと赤い色に咲くことが由来です。

また、上記の通りですが花が枯れてから葉が伸びるという特異性が
他の植物から独立していることも由来かもしれません。




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この様に花言葉を見てみると
別名・異名のように怖いイメージも少しは薄れるかもしれません。


また、仏花として御供のお花に用いられそうですが
仏教ではおめでたいことの兆しの花、天界に咲く花とされていて
相応しくありませんので注意が必要です。










【4】彼岸花の毒性を使った工夫



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全草有毒性であるヒガンバナ。
特に鱗茎と呼ばれる球根の部分に
多くのアルカロイド系(リコリン、ガランタミンなど)の毒があります。
誤飲した場合、吐き気や下痢といった症状を伴い
酷い場合には死に至ることもあります。


この強い毒性を利用して田んぼの畔に穴を掘る
モグラや野ネズミを寄せ付けないように
たくさんのヒガンバナを植えたとされています。
また、墓場にヒガンバナが多く自生しているのも同じような理由です。



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そして、この有毒なヒガンバナの鱗茎は
水晒しという技法により食用の良質なデンプンが採れ
その昔の中国地方で大飢饉が発生した時に
最後の切り札の非常食としてヒガンバナを食べて
助かったという話もあります。







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このような歴史的背景があり
ヒガンバナには他に類を見ないほどのたくさんの
怖い異名などが生まれたものと考えられます。



ヒガンバナの球根を子どもたちが掘り返して
誤って食べてしまわないように
『彼岸花の下には死体が埋まっている』だったり…


もしもの時に備えて非常食になるヒガンバナに
人を近付けないようにするために
怖い名前で呼び、それが日本中に広まり
今日まで受け継がれています。

昔の人たちの知恵で今でもヒガンバナと聞くと
怖いイメージの花となってしまうのです。




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【5】飾り方の紹介



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ヒガンバナはリコリスとの名で流通することがほとんどで
園芸種のリコリスは自生している野生種のヒガンバナとは
若干違います。

日本では忌み嫌われる傾向にあるヒガンバナですが
海外ではその妖艶な美しさから頻繁に品種改良がおこなわれ
今ではオレンジや青などの色もあります。
その毒性から虫などがつきにくく
育てやすい植物ですので鉢物や庭植えで楽しむことを
お勧めします。


また飾り方としては花瓶に切り花として生けて飾ることを
お勧めします🌼

樹液でも手がかぶれたりするので
厚手のゴム手袋を使用するなど取り扱いには注意が必要です。








【6】終わりに



今回はヒガンバナについてご紹介しました。

たくさんの怖い名前やイメージから
好き嫌いの分かれるお花ですが
昔の人の知恵や工夫で長い年月をかけて
悪いイメージが定着しました。

でもそれは身近にある強い毒性植物から
人々を守るための工夫だったのです。



季節の移ろいを感じながら
赤く咲き誇る彼岸花の毒々しくも美しい姿を
鑑賞してみてはいかがでしょうか。







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